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大阪地方裁判所 平成6年(ワ)10672号 判決

反訴原告

紫藤辰治

反訴被告

嶋田貴之

主文

反訴被告は、反訴原告に対し、金二六万九〇七三円及びこれに対する平成三年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

反訴原告のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は、反訴原告の負担とする。

この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一反訴原告の請求

反訴被告は、反訴原告に対し、金九六四万一八七四円及びこれに対する平成三年一〇月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、信号機のない交差点で、普通乗用自動車と原動機付自転車が出会い頭に衝突し、原動機付自転車の運転者が普通乗用自動車の運転手に損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

1  本件事故の発生

発生日時 平成三年一〇月二一日午前七時四五分ごろ

発生場所 大阪市住之江区西住之江三―一一先

被害車両 反訴原告運転の原動機付自転車(以下「反訴原告車」という。)

加害車両 反訴被告運転の普通乗用自動車(以下「反訴被告車」という。)

事故の態様 信号機のない交差点で、反訴被告車と反訴原告車とが出会い頭に衝突した。

2  責任原因

反訴被告は、反訴被告車を自己のため運行の用に供していたものであり、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、反訴原告が被つた後記人身損害を、また、一時停止を怠つた過失があるから、民法七〇九条により後記物的損害を賠償する義務がある。

3  損害

(一) 受傷

反訴原告は、本件事故により、頭部打撲傷、肋軟骨骨折、頸部打撲、右肩鎖関節亜脱臼、右肩、右肘挫傷の傷害を負つた。

(二) 入通院の経緯

(1) 医療法人弘善会矢木外科病院(以下「矢木病院」という。)

入院 平成三年一〇月二一日から同年一二月二六日まで(六七日)

(2) 林病院

入院 平成三年一二月二六日から平成四年二月二二日まで(五九日)

(3) 医療法人橘会東住吉森本病院(以下「森本病院」という。)

通院 平成四年二月一〇日

(4) 越川整形外科病院(以下「越川病院」という。)

通院 平成四年二月二四日から同年末まで

二  争点

1  損害

(反訴原告の主張)

(1) 治療関係費 二〇万七三〇〇円

越川病院 二〇万五七四〇円

平成四年五月一日から平成六年七月三一日まで 一七万六八四〇円

平成六年九月二日から平成七年五月二六日まで 二万八九〇〇円

大阪市立大学医学部付属病院(以下「市大病院」という。) 一五六〇円

治療費として、他に、反訴被告が支出した分があるが、既に支払われているので控除する。

(2) 入院雑費 一八万九〇〇〇円

反訴原告は、前記矢木病院及び林病院に合計一二六日間入院し、一日当たり一五〇〇円の雑費を要した。

(3) 通院交通費 二五万五六三〇円

反訴原告は平成四年三月九日から同年四月二日までの間(実日数四日間)市大病院に通院するため一五六〇円、同年五月一日から平成五年七月二日まで(実日数二九一日)越川病院に通院するため一二万二二二〇円、同月三日から平成七年五月二六日まで(実日数二九三日)同病院に通院するため一三万一八五〇円を交通費として支出した。

(4) 休業関係損害 五六五万〇七四四円

反訴原告は、本件事故により、三九八日(平成三年一〇月二一日から平成四年一一月二一日まで)休業し、本件当時日給一万〇六九五円を得ていたので、四二五万六六一〇円を失い、また、休業に伴う一時金の減額八七万五二六四円、退職金の減額一二万六一〇〇円及び有給休暇の資格喪失分三九万二七七〇円等の損失が生じた。

(5) 入通院慰謝料 二七〇万〇〇〇〇円

(6) 洗車費用 四三万九二〇〇円

反訴原告は、本件事故による腕の痛みのため、自分の乗務する営業用タクシーを洗車することができず、一回当たり八〇〇円で、平成四年一一月から平成八年三月まで、五九四回、業者に洗車を依頼した。

(7) 物損 二〇万〇〇〇〇円

眼鏡 七万〇〇〇〇円

車両破損分 一三万〇〇〇〇円

(反訴被告の反論)

反訴原告の本件事故による治療の内、事故と相当因果関係があるのは平成三年一二月二六日までの矢木病院におけるもののみで、かつ、同病院での入院の必要性は認めることができない。

つまり、反訴原告は、本件事故前の平成元年一一月七日にも交通事故に遭い、本件事故発生日である平成三年一〇月二一日当時は、越川病院で根性腰痛症、右肩甲上部の圧痛等で通院中であつた。また、本件事故により、反訴原告は救急車で矢木病院に搬送され、その際、通院可能であるにもかかわらず、本人の希望で入院となつた。同病院での初診時の傷病名は、頭部打撲、右肩・右肘打撲挫傷、肋軟骨骨折、頸部打撲、右肩鎖関節亜脱臼で、うち、主要傷病である肋軟骨骨折、右肩鎖関節亜脱臼に対し、約一か月の固定治療が行われ、同年一二月二六日にはいずれも治療もしくは医学上必要な治療は終了したのである。

2  過失相殺(反訴被告の主張)

本件事故交差点付近は、時速二〇キロメートルの速度規制があり、反訴被告が時速一〇キロメートルの速度で既に交差点に進入していたにもかかわらず、反訴原告は時速三五キロメートルの速度で、交差点内の安全を確認することなく、交差点に進入したもので、反訴原告の過失割合は五割を下回ることはない。

3  損害のてん補(反訴被告の主張)

反訴被告は、反訴原告に対し、本件交通事故に基づく損害金として、合計四八七万二五三五円の支払いをした。

第三争点に対する判断

一  損害

1  証拠(甲第一〇、第一四の一及び二、第一五、第一六の一及び二、反訴原告本人)によれば、反訴原告は、平成元年一一月七日、タクシー乗務中に交通事故に遭い、同日、越川病院で受診し、頸部、胸部、腰部挫傷、外傷性頸部症候群の傷病名で同日から平成二年三月一五日まで入院し、同病院の診療録中の平成元年一一月七日欄には、頸椎の中間位S状変形、C三・四、五・六間狭小、頸部痛+である旨、平成二年三月六日欄には、C五・六狭小である旨、同病院を退院した同月一五日欄には、腰痛、頸腕症候の訴えがある旨の各記載があり、退院後も同病院に本件事故直前の平成三年一〇月一八日まで、当初はほぼ連日、同年四月中旬ごろまでは数日おきに通院を続け、診療録の平成二年三月二〇日欄には、右肩に力が入らない旨、同年七月三一日欄には頸部運動障害がある旨の、平成三年一〇月一八日欄には右肩甲圧痛がある旨の各記載があり、その間、同年八月二三日から同月二九日間での間には右尿管結石、腎機能障害等の病名で南大阪病院に入院したこと、

証拠(甲第八、第九、第一一の一及び二、第一二、第一七の一から五まで)によれば、反訴原告は、本件事故当日である平成三年一〇月二一日、矢木病院に救急車で搬送され、搬送時には、右側胸部痛+、呼吸苦+等の症状が見られ、入院後直ちに頭部CTが実施されるなどしていること、同日から同年一二月二六日に林病院に転院するまで入院したこと、

矢木病院の医師作成の同年一〇月二一日付け診断書には、頭部頸部打撲、右肩右肘打撲挫傷、肋骨骨折(疑)等の傷病名で、同日から約二週間の通院入院加療を要する旨の記載があること、同月二一日には装具を装着し、診療録の同月二八日の欄には、装具固定期間は一か月である旨の、同月二九日付け診断書には、右肩鎖関節亜脱臼、右肋骨骨折、頭頸部打撲、右肩・右肘挫傷等の傷病名で、同月二一日から約一か月間の通院入院加療を要する旨の各記載があること、同年一一月一八日には、リハビリを開始し、診療録の同月一九日欄には、退院を少し延期する旨の、同年一二月九日欄には、頸部痛+、右胸鎖乳突節圧痛+、神経学的徴候-である旨の、看護退院・転院サマリーには「通院可能であるが、本人希望の入院である」旨の記載があり、肩関節の可動域は(屈曲(自動)右一四四、左一六五、(他動)右一六八、左一七八、伸展(自動)右四五、左五〇、(他動)右五〇、左五〇、外転(自動)右一六五、左一八〇、(他動)右一七五、左一八〇、内転(自動)右〇、左〇、(他動)右〇、左〇、外旋(自動)右四四、左六七、(他動)右六五、左九〇、内旋(自動)右三〇、左八〇、(他動)右五四、左九〇)であつたこと、

同年一二月二六日から平成四年二月二二日まで林病院に入院し、同年一月一五日に外泊した他は入院を続け、介達牽引、肩甲上神経節ブロツク、硬膜外麻酔(頸・胸部)、星状神経節ブロック等の治療を受けたこと、同年二月一〇日に森本病院でMRI検査を受け、同病院医師作成のMRIレポートには、C二から七にかけて各椎間板で骨棘形成が見られ、特にC三・四レベルでは後方突出が著名であり(骨棘と椎間板ヘルニアの鑑別は像では困難である)C三・四レベルで頸髄の前方より圧迫が疑われ、他のレベルでは特に脊柱管狭小化は認められない旨記載され、病名はC三・四間頸椎症とされていること、同月二二日に林病院を退院し、越川病院に転院する際、林病院の医師は診療情報提供書を作成し、そこには、反訴原告の傷病名を頸部捻挫、右肩鎖関節亜脱臼、右肋軟骨骨折とし、林病院では、頸部捻挫に対し、頸部挫硬膜外注入、星状神経ブロツク、項局部ブロツク等を施術し、レントゲン線、MRIにて軽度の変形性変化が見られ、反訴原告に対し、頸部捻挫及び右肩鎖関節亜脱臼に対し保存的治療をする旨説明したが、本人の希望で退院する旨の記載があること、

反訴原告は同月二四日から、頸部捻挫、右肩鎖関節亜脱臼、右肋軟骨骨折の傷病名で越川整形外科を受診し、以後通院を始め、同年三月、四月に市大病院を受診し、同病院の医師は同月二日付け診断書及び越川病院医師宛の文書を作成し、それらには、筋電図上右二頭筋、三頭筋三角筋、小指節に多層パターンが見られ、頸部脊柱管関連のものと考えられる旨の記載があること、越川病院では、同月以降、注射、牽引を継続し、その内容はほとんど変化がなく、反訴原告が仕事を再開した同年一一月二二日の前後においても同様であること、越川病院医師は、平成六年八月一〇日付けで自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書を作成し、そこには、平成六年七月三一日に反訴原告は症状固定した旨、自覚症状として、新聞をめくるだけで右肩痛、長時間車を運転すると頭痛+、車のハンドルを切る時疼痛+、タクシーの洗車が右腕が痛くてできない旨、後遺障害の内容欄の精神神経の障害、他覚症状および検査結果欄には腕神経叢圧痛両側+、上腕二頭筋腱圧痛両側+、頸椎棘突起の叩打痛+、僧帽筋圧痛両側+等の記載があること、自賠責保険は反訴原告の障害につき後遺障害には該当しない旨の判断をしたこと、

以上の事実を認めることができる。

2  右の事実によれば、反訴原告の受傷部位、受傷内容に鑑み、本件事故と反訴原告の傷害との間には因果関係が存するというべきであるが、他方、反訴原告には、平成元年一一月の交通事故による頸部、胸部、腰部挫傷、外傷性頸部症候群の既往症がある上、本件事故前に頸椎の中間位変形、C三・四、五・六間狭小等が認められており、本件事故後のMRI検査でも、C二から七にかけて各椎間板で骨棘形成が見られ、本件事故とこれらの加齢性の変化がともに反訴原告の症状の持続等の原因となつている可能性は否定できない。

また、反訴原告の負傷は、平成三年一〇月二九日付け診断書では、約一か月間の通院入院加療を要するものとされたこと、林病院の治療内容、平成四年二月二四日ごろには、反訴原告に対し、頸部捻挫及び右肩鎖関節亜脱臼に対し保存的治療が考えられていたこと、同年四月以降の、注射、牽引という治療の内容はほとんど変化がないこと等に鑑みれば、本件事故と反訴原告が被つた損害とは、本件事故から平成三年一二月二六日までの分については全部、その後平成四年四月末までの分について八割の範囲に限り相当因果関係を有するというべきである。

二  損害額について

1  治療関係費 一二六四円

(一) 反訴原告の本件事故による矢木病院における入院治療については、交通事故による負傷入院という経緯、入院時の状況、反訴原告の負傷等から必要性を認めることができ、林病院における入院加療についても、一日の外泊を除き入院を続け、治療を受けたこと、退院も本人の希望であつたこと等に鑑みれば、その必要性を否定することはできないと解される。矢木病院の看護退院・転院サマリーには「通院可能であるが、本人希望の入院である」旨の記載があるけれども、右記載をした矢木病院とは別の林病院に入院し、同院医師の治療が行われていた以上、右認定を左右するものではないと解される。

(二) 証拠(乙第四から第一五まで、第三一の一から五まで、第四二の一及び二)によれば、反訴原告が要した治療費は、矢木病院分二一七万七五五〇円、林病院分一五九万五二四〇円、森本病院分五万七八四〇円、越川病院分平成四年二月二四日から同年四月三〇日まで三八万七五八〇円、平成四年五月一日から平成六年七月三一日まで一七万六八四〇円、平成六年九月二日から平成七年五月二六日まで二万八九〇〇円、市大病院分平成四年三月九日から同年四月二日まで(四日)一五八〇円であるところ、前記一で判示したように、本件事故と相当因果関係を有するのは、平成三年一二月二六日までの分の全部及びその後平成四年四月末までの分の八割の範囲、すなわち、矢木病院分の全額、林病院、森本病院、市大病院及び越川病院の平成四年四月末までの分の八割(三八一万一三四二円)に限られる。

そうすると、原告の請求は、越川病院の治療費については、平成四年五月一日以降分にかかるものであるから、これを認めることができず、市大病院分一五八〇円の八割である一二六四円の限度で理由があることとなる。

2  入院雑費 一七万一三〇〇円

前記一のとおり、反訴原告は、矢木病院に平成三年一〇月二一日から同年一二月二六日まで(六七日)、林病院に同月二六日から平成四年二月二二日まで(五九日)入院し、前記1のとおり、入院の必要性も認められ、本件事故から平成三年一二月二六日までの分については全部、その後平成四年四月末までの分について八割の範囲で本件事故と相当因果関係を有すると解されるから、入院雑費は、一日当たり一五〇〇円の割合で、合計一七万一三〇〇円と認める。

3  通院交通費については証拠がない。

4  休業関係損害 二四九万一六八八円

(一) 反訴原告は、本件事故により、平成三年一〇月二一日から平成四年一一月二一日までの三九八日間休業し、当時、一日の平均給与一万〇六九五円の支給を受けていた旨主張するけれども、右給与日額についてはこれを認めるに足りる証拠がない。

ところで、証拠(乙第三三の一、反訴原告本人、弁論の全趣旨)によれば、反訴原告は、昭和一五年三月二日生まれの本件事故当時五〇歳の男性で、本件事故当時、鳩タクシー株式会社に勤務していたタクシー乗務員であり、本件事故により右タクシー乗務に従事できなかつた(平成三年一〇月二一日から同年一二月二六日まで六七日、同月二七日から平成四年四月末日まで一二六日)ことが認められるところ、本件事故のあつた平成三年度の賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・男子労働者・学歴計の五〇歳から五四歳の年額賃金が六八二万八四〇〇円であることは当裁判所にとつて顕著な事実であり、右平均賃金の日額は一万八七〇七円で反訴原告主張にかかる一日の平均給与一万〇六九五円はこれを下回つているので、反訴原告主張にかかる額を基礎とし、前記のとおり本件事故と相当因果関係を有すると解される、本件事故から平成三年一二月二六日までの分については全部、その後平成四年四月末までの分については八割の範囲で算出すると、休業損害は一七九万四六二一円と認める。

(算式)10,695×(67+126×0.8)

また、証拠(乙第三三、第三四の各一及び二、反訴原告本人)によれば、反訴原告の休業に伴い、一時金の減額八七万五二六四円、退職金の減額一二万六一〇〇円及び有給休暇の資格喪失三九万二七七〇円等が生じたこと、右各金額の算定は平成三年一〇月二一日から平成四年一一月二一日までの三九八日間の休業を前提としていることを認めることができるので、右合計金額一三九万四一三四円の二分の一である六九万七〇六七円をもつて休業に伴う減収とする。

5  入通院慰謝料 一三〇万〇〇〇〇円

前記のとおり、反訴原告は一六二日間入院し、証拠(甲第一七の一、乙第一五)によれば、越川病院に平成四年二月二四日から同年四月末日までの間に実日数で五二日通院したことを認めることができ、受傷部位及び程度、治療経過、年齢、既往症の存在、その他の諸事情を考慮すれば、慰謝料としては、一三〇万円が相当である。

6  洗車費用

反訴原告は、本件事故による腕の痛みのため、自分の乗務する営業用タクシーを洗車することができず、一回当たり八〇〇円で、平成四年一一月から平成八年三月まで、五四九回、業者に洗車を依頼した旨主張し、これに沿う内容の証拠(乙第四四の一から第四〇まで、反訴原告本人)も存するけれども、前記のとおり、本件事故と相当因果関係を有する損害の範囲は、本件事故から平成三年一二月二六日までの分の全部、その後平成四年四月末までの分の八割に限られるというべきであるから、原告の右主張はこれを認めることができない。

7  物損 一三万五八三七円

証拠(乙第三五、第三六、反訴原告本人)によれば、反訴原告は、本件事故により眼鏡及び当時乗車していた反訴原告車を破損し、眼鏡代七万〇〇〇〇円、車両修理代として六万五八三七円を支出したことを認めることができる。

三  過失相殺

証拠(乙第一から第五まで、反訴原告本人)によれば、本件交差点は大阪市住之江区西住之江三―一一先に位置し、信号機がなく、付近の道路は市街地に位置し、アスフアルト舗装され、平坦で、本件当時は乾燥していたこと、東西道路は交差点より東側の幅員が七・三メートルで、南北道路は交差点より北側の幅員が七・六メートルであること、反訴原告車は南北道路を南に、反訴被告車は、東西道路を西に向けて走行していたこと、南北道路には南行きの一方通行の、東西道路には本件交差点の東詰め及び西詰めにそれぞれ一時停止の規制があり、付近は最高速度時速二〇キロメートルに規制されていること、本件交差点手前において反訴原告車及び反訴被告車いずれからも左右の見通しは悪いこと、反訴被告は本件交差点の手前で時速約一〇キロメートルに減速したが、一時停止することなく交差点に進入したこと、反訴原告は時速三〇から三五キロメートルの速度で交差点に進入したこと、反訴原告車の前部と反訴被告車の右後部フエンダー付近とが衝突したこと等の事実を認めることができ、右の事実に前記争いのない事実を併せ、本件事故の態様、運転車両の速度等を総合考慮すれば、本件事故に関する反訴原告及び反訴被告の過失割合は、反訴原告が三五パーセント、反訴被告が六五パーセントと解するのが相当である。

四  損害てん補について

証拠(乙第二〇、反訴原告本人)によれば、反訴原告は、本件事故の損害金として、合計四八七万二五三五円の支払いを受けたことを認めることができる。

五  前記二記載の損害額の合計四一〇万〇〇八九円に、前記二1記載の本件事故による原告の治療費(市大病院分を除く)合計三八一万〇〇七八円を加えた七九一万〇一六七円対し前記三記載の過失割合に基づき過失相殺を行つて得られた額五一四万一六〇八円から同四記載の損害てん補額を減ずると二六万九〇七三円となる。

六  以上のとおりであつて、反訴原告の本訴請求は、二六万九〇七三円及びこれに対する併三年一〇月二二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 石原寿記)

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